眩いばかりの光と天にも昇るが如くのデヴィッド・ギルモアのギターに包まれ、酔いしれた、
ロイヤル・アルバート・ホール公演初日ライヴ・レポート。
デヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュがゲスト参加!
ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアの9年ぶりのソロ新作『飛翔』に合わせて、9月12日からスタートした“The Rattle Thar Lock World Tour”。これまでにクロアチア、イタリア、フランス、ドイツと4公演行なわれてきたが、遂に地元英国での凱旋公演、ロンドンの伝説的ロイヤル・アルバート・ホール5DAYS公演がスタート。9月23日行なわれた初日ライヴ・レポートを最速でお届けする。
photo@Shu Tomioka
コンサートは1部2部構成で途中休憩を挟みつつ、眩いばかりの光と天にも昇るが如くのギルモアのギターに包まれ、酔いしれた、トータル約3時間にも及ぶ凄まじいコンサートだった。ステージ上部には数々のピンク・フロイドのツアーで使用されてきた通称Mr.Screenと呼ばれている、巨大な円型スクリーンが設置され、そこから放たれる光の洪水、そして想像力を掻き立てる様々な神秘的な映像の数々は否が応にも、ピンク・フロイドを彷彿させるものであった。
19時45分定刻でスタート。バンドがステージに登場すると割れんばかりの歓声でロンドンの観衆が出迎える。会場中に自然音のSEがサラウンドで流れると、ブルーのライトに包まれる中、ギルモアの泣きのギターが印象的な最新作『飛翔』のオープニング・ナンバー「午前五時の旋律」が静かに奏でられる。続けて新作からの第一弾シングルとなった「ラトル・ザット・ロック~自由への飛翔」へ。円型スクリーンには最新ビデオが映し出される。ギルモアはテレキャスターを使用し、ナチュラルなトーンで生々しいソロを聴かせてくれる。「ようこそロイヤル・アルバート・ホールへ。今日は楽しんでいってほしい」と一言挨拶し、3曲目「夢のままに」へ。ギルモアはブラック・ストラトキャスターに持ち帰ると、ディレイを効かせた咽び泣くようなソロを披露。ここまで新作から頭3曲がその順番通りに演奏された。そして「ちょっと昔へ行ってみよう」と語り、聞きなれたイントロのフレーズが奏でられると場内は大絶叫。ピンク・フロイド1975年の『炎』より「あなたがここにいてほしい」は会場中の大合唱となった。
ここでサプライズ。ギルモアが「それではスペシャル・ゲストを迎えよう」と語るとデヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュが登場。亡きリチャード・ライトに捧げられた「天国への小舟」を披露。クロスビー&ナッシュ2人の美しいハーモニーとギルモアのペダルティールが場内を包み込む。次は『オン・アン・アイランド』から「ザ・ブルー」。最初はなぜこの曲がセットリスト選ばれたのかが不思議だったのだが、ギルモアのギターの真骨頂ともいえるパフォーマンスで、ブラックのストラトで奏でるギターの音色はまさに天にも昇るが如く、陶酔感を感じる瞬間だった。
ここから名曲のオンパレードで畳みかける。『狂気』から「マネー」と「アス・アンド・ゼム」では巨大円型スクリーンにピンク・フロイド時代に使用したものと同じ、不可思議な世界観の映像が映し出される。かつてピンク・フロイド時代で使用されていたものよりも、かなりクリアでリマスターされたかのような美しさだったのにはとても驚いた。続けて新作より「狂気の世界」。新作の中でも最もピンク・フロイドを感じるこの曲は、名曲群に挟まれてもまったく違和感がなく、ギルモアのギターが唸りをあげる。そして第1部の最後は『対(TSUI)』より「運命の鐘」。スクリーンには亡きストーム・トーガソンが制作した素晴らしいビデオが映し出され、ドラマティックな曲とともに見事な世界観を見せつけてくれた。この第1部の最後を締める4曲は、展開するごとにぐいぐい昇りつめるような感覚を与えてくれ、まさにこの夜のハイライトのひとつであったと思う。
休憩をはさんで第2部の1曲目はピンク・フロイドの1967年のデビュー作『夜明けの口笛吹き』から「天の支配」。ここではデビュー当時に試みていたライト・ショーを再現。ステージ全体がグリーン、レッド、ブルーにリズムに合わせて発光。会場中がサイケデリックな模様で埋め尽くされ、リキッド・ライトによる摩訶不思議な模様が変化し、否が応にも聴く者のイマジネーションを掻き立ててくれる。続けざま2曲目のイントロが始まると、再び場内が大絶叫。「クレイジー・ダイアモンド」ではギルモアのブルージーなギターフレーズに観衆の誰しもが酔いしれる。3曲目も立て続けにピンク・フロイド・ナンバー、アコースティック・ギターに持ち替えて、『原子心母』からの「デブでよろよろの太陽」を披露。そして『オン・アン・アイランド』からのタイトル曲では再びデヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュが登場し共演した。
新作からの「黄色いドレスの少女」では一気に雰囲気が変わり、会場がジャズ・バーのような雰囲気に。スクリーンにはこの曲のストーリーをイメージさせるアニメーションが映し出される。新作からの第二弾シングル「TODAY~今日を生きる」を挟んで、デヴィッド・ギルモアのソロ・コンサートではこれまで演奏されず、今回のツアーから初めてセットリストに入ったピンク・フロイド・ナンバー「時のない世界」(『鬱』)と「ラン・ライク・ヘル」(『ザ・ウォール』)へ。ヘヴィーなリフでスタートする「時のない世界」ではギルモアの背後からレーザー光線が飛び出し会場中を照らし出す。ピンク・フロイド時代のライヴではアンコールのラストで演奏されることが多かった「ラン・ライク・ヘル」では、イントロのギルモアのリフに合わせてレーザー光線と照明が幾何学的な模様を映しだし、曲間では円型スクリーンからこれでもかというくらいに様々な色が発光。あまりにも光が強いのか、この曲だけステージ上のバンド全員がサングラスを付けていた。(「ラン・ライク・ヘル」はピンク・フロイドの1994年”The Division Bell Tour”以来約21年振りのライヴ演奏となるもの)。
アンコールで再び登場し、『狂気』から「タイム〜ブリーズ(リプライズ)」のメドレー。「タイム」ではピンク・フロイド時代の映像、時計のアニメーションなどがスクリーンに映し出される。そして「ブリーズ(リプライズ)」へ。ここで感じるのはリック・ライトへの喪失感。途中リックが歌うパートがあり、浮遊感のあるリックのヴォーカルはこの曲のイメージを形作る大きな要素であったが、そのパートはバック・ヴォーカリストによって歌われていた。。。誰もがリックがいないという事実を感じた瞬間だろう。そして本日の最大のハイライトが訪れる。デヴィッド・ギルモアの代名詞ともいえる『ザ・ウォール』収録の「コンフォタブリー・ナム」。この曲で再びデヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュが登場。ロジャー・ウォーターズのパートをデヴィッド・クロスビーが歌うという贅沢なパフォーマンスとなった。最大の見せ場はギルモアのギター・ソロ。ブラックのストラトで奏でる美しいソロとともに、円形スクリーンの周囲の無数とも思えるヴァリライトがすべてギルモア一点に注がれ、まさに「音と光が融合」した瞬間、あまりにも感動的なものだった。
セットリストは全20曲中、新作『飛翔』から7曲、前作『オン・アン・アイランド』から2曲、ピンク・フロイドの楽曲を11曲披露。完全ソールドアウトの6000人の観客を魅了した。
デヴィッド・ギルモアのフル・ライヴ・ショーは9年振り。新作『飛翔』に伴うワールド・ツアーはこのあとヨーロッパ・ツアーを敢行。その後は12月に南米5公演、2016年3月~4月に北米11公演が控えている。チケットは全公演ソールド・アウトとなっている。
<9月23日ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホール・セットリスト>
First Set:
1 午前五時の旋律/5am(New Album『飛翔』2015)*
2 ラトル・ザット・ロック~自由への飛翔/Rattle That Lock(新作『飛翔』2015)*
3 夢のままに/Faces Of Stone(New Album『飛翔』2015)*
4 あなたがここにいてほしい/Wish You Were Here(ピンク・フロイド『炎~あなたがここにいてほしい』1975)
5 天国への小舟(リチャード・ライトへ捧ぐ)/A Boat Lies Waiting(New Album『飛翔』2015)*
6 ザ・ブルー/The Blue(『オン・アン・アイランド』2006)
7 マネー/Money(ピンク・フロイド『狂気』1973)**
8 アス・アンド・ゼム/Us And Them(ピンク・フロイド『狂気』1973)**
9 狂気の世界/In Any Tongue(New Album『飛翔』2015)*
10 運命の鐘/High Hopes(ピンク・フロイド『対(TSUI)』1994).
Second Set:
11 天の支配/Astronomy Domine(ピンク・フロイド『夜明けの口笛吹き』1967)
12 クレイジー・ダイアモンド/Shine On You Crazy Diamond (Parts 1-5) (ピンク・フロイド『炎~あなたがここにいてほしい』1975)
13 デブでよろよろの太陽/Fat Old Sun(ピンク・フロイド『原子心母』1970)
14 オン・アン・アイランド/On An Island(『オン・アン・アイランド』2006)
15 黄色いドレスの少女/The Girl In The Yellow Dress(New Album『飛翔』2015)*
16 今日を生きる/Today(New Album『飛翔』2015)*
17 時のない世界/Sorrow(ピンク・フロイド『鬱』1987)**
18 ラン・ライク・ヘル/Run Like Hell(ピンク・フロイド『ザ・ウォール』1980)**
Encores:
19 タイム〜ブリーズ(リプライズ)/Time~Breathe (reprise) (ピンク・フロイド『狂気』1973)
20 コンフォタブリー・ナム/Comfortably Numb(ピンク・フロイド『ザ・ウォール』1980)
*New Album『飛翔』収録曲
**デヴィッド・ギルモアがソロ・ライヴで初めて演奏したピンク・フロイド・ナンバー
アルバム『飛翔』日本盤は9月23日発売。日本のみ高品質Blu-spec CD2仕様でのリリースとなる。デラックス・ヴァージョンのボーナスBDとDVDには110 分にも渡る10曲の未発表映像、4曲の未発表バージョン音源、更にアルバム・ハイレゾ音源も収録。アルバムのメイキング映像ではギルモアのスタジオでのレコーディング風景や、この作品の成り立ちなどをギルモアや関係者が語る貴重な映像満載。ギルモアの自宅の納屋のスタジオでのジャム・セッション映像「バーン・ジャム」には、2008年9月15日に他界した元ピンク・フロイドのキーボーディスト、リチャード・ライトとの最後のセッション映像も収録されている(2007年1月のセッションより)。また、デラックス・ヴァージョンには二冊のハードカバー本、ギター・ピックやポスター、ポストカードなどの特典が満載。豪華ボックスに収納されている。
先日日本のファンへ向けたメッセージも公開されている。
https://www.youtube.com/watch?v=ndMYcKnvFL8
これまで公開された映像は下記。
https://www.sonymusic.co.jp/davidgilmour
【商品情報】
デヴィッド・ギルモア 『飛翔』
DAVID GILMOUR/RATTLE THAT LOCK
2015/09/23発売 日本盤のみ高品質BSCD2仕様
収録曲:
DISC1 <CD>日本盤のみ高品質Blu-spec CD2仕様
1 午前5時の旋律*
2 ラトル・ザット・ロック~自由への飛翔
3 夢のままに
4 天国への小舟(リチャード・ライトに捧ぐ)
5 哀愁の舞踏
6 狂気の世界
7 ビューティ*
8 黄色いドレスの少女
9 TODAY
10 未来への飛翔*
*インストゥルメンタル/他7曲は歌詞・ヴォーカル入
DISC2 <Bonus: BD or DVD>
●AUDIO-VISUAL(未発表映像)
1. バーン・ジャム1
2. バーン・ジャム2
3. バーン・ジャム3
4. バーン・ジャム4
5. ミュージック・ビデオ制作秘話(アラスデア+ジョック)*
6. 「ラトル・ザット・ロック~自由への飛翔」(ミュージック・ビデオ)
7. ミュージック・ビデオ制作秘話(ダニー・マッデン)*
8. 「黄色いドレスの少女」(ミュージック・ビデオ)
9. ポリー・サムソン&デヴィッド・ギルモア・インタビュー(ボリス・ハウス・フェスティヴァル)*
10.メイキング・オブ・ザ・ラトル・ザット・ロック *
*日本語字幕付
●AUDIO ONLY(未発表ヴァージョン)
11. ラトル・ザット・ロック~自由への飛翔(Extended Mix)
12. 黄色いドレスの少女(Orchestral Version)
13. ラトル・ザット・ロック~自由への飛翔(Youth Mix–12” Extended Radio Dub)
14. ラトル・ザット・ロック~自由への飛翔(Radio Edit)
●SAROUND SOUND ALBUM 5.1 sound, PCM Stereo
<Blu-ray Version>:
*『飛翔』アルバム・ハイレゾ音源(96kHz/24 bit):5.1 サラウンド (PCM and DTSマスター・オーディオ)とステレオ・ヴァージョンを収録
<DVD Version>:
*『飛翔』アルバム・ハイレゾ音源(48kHz/24 bit):5.1 サラウンド (PCM and DTSマスター・オーディオ)とステレオ・ヴァージョンを収録
【DELUXE BD VERSION】
2015/09/23発売 日本盤 SICP-30815~30816 BSCD2仕様 ¥5,000+税
●BSCD+Blu-ray 豪華2枚組ボックス・セット
●オーディオ・ヴィジュアル・マテリアル:①未発表映像10曲②未発表音源4曲③サラウンド・アルバム
①オーディオ・ヴィジュアル10曲映像(Barn Jam4曲、プロモビデオ2曲、ドキュメンタリー4曲)
( 「バーン・ジャム」セッション映像4曲:リチャード・ライトの録音・録画パフォーマンスとしては最後の映像が含まれる)
②オーディオ・トラック4曲(未発表ヴァージョン4曲)
③サラウンド・サウンド・アルバム:5.1サラウンド(PCMおよびDTSマスター・オーディオ)および96kHz/24ビットのアルバム・ハイレゾ・バージョン収録
●32ページ・ハードカバー・ブック:背表紙付き写真・歌詞入りブック。アーティスト写真:ケヴィン・ウェステンバーグ / アルバム・セッション写真:ポリー・サムソン
●48ページ・ハードカバー・ブック『失楽園(Paradise Lost)』(第2巻)
●特典グッズ:ポスター、ポストカード、ピックなど
shop (CD+BD)
【DELUXE DVD VERSION】
2015/09/23発売 日本盤 SICP-30817~30818 BSCD2仕様 ¥4,000+税
●BSCD+DVD 豪華 2枚組ボックス・セット
以下BD VERSIONを参照
shop (CD+DVD)
【STANDARD VERSION】
2015/09/23発売 日本盤 SICP-30819 BSCD2仕様 ¥2,500+税
●Blu-spec CD2
●ハード・カバーの本型パッケージ。背表紙は布製で金色の箔でブロックされている。カラーCDレーベル
●22ページ写真・歌詞入りブックレット。
shop(CD)
【VINYL LP】 (輸入盤Only)
*GATEFOLD SLEEVE(見開きジャケット)/重量アナログ盤/写真入り内袋/フルカラー・レーベル/ダウンロード・カード
*フル・サイズの16ページ写真・歌詞入りブックレット。
【DIGITAL】
■ ハイレゾ・ヴァージョン
- Deluxe
■ iTunes Store
【関連リンク】
アーティスト・オフィシャルサイト:http://www.davidgilmour.com